実施済み支援事業報告 岩手県立高田高等学校 被災資料修復
岩手県立高田高等学校 被災資料修復
期 間:平成25年1月~6月
支援内容:岩手県立高田高等学校の被災した校内資料等の修復作業
・色紙修復 1点(外部へ業務委託)
・校内資料修復 1,140点
作 業 者 :本学司書課程教員、学生ボランティア、外部ボランティア参加者、図書館職員
作業場所:盛岡大学(校内資料修復)
協力団体:遠野市遠野文化研究センター、東京文書救援隊、株式会社資料保存器材
資材協力:株式会社寿広
「富士大学・盛岡大学震災復興支援ライブラリーネット」と共同
2013/4/1更新
岩手県立高田高校の被災資料修復作業を行っています。
高田高校は東日本大震災で校舎が壊滅的な被害を受け、
現在は大船渡東高校萱中校舎へ移転して授業を行っています。
2012年10月に、旧校舎から辛うじて残っていた校内資料を高田高校の教員が発見・回収しましたが、
長期間の放置により砂の残留やカビの発生がみられ、自校での修復が困難とされたため、
本プロジェクトで救済支援を行うこととなりました。
今回の支援では下記2つの活動を行いました。
1.同校所蔵、谷川徹三氏揮毫の色紙修復(外部業者へ委託)
2.その他校内資料のドライクリーニング、洗浄・乾燥
1については、貴重な品で、カビの発生が著しいこと等状態を考慮した結果、外部の業者に修復を依頼しました。
2については、盛岡大学にて学生ボランティア・外部参加者のみなさんと作業を行い、
資料のドライクリーニング、洗浄・乾燥の方法等について、
遠野市遠野文化研究センターの方に技術協力・指導をお願いしました。
今回は主に2について進捗状況をお知らせします。
校内で作成される資料は、他に代替が存在せず、その学校の歴史を物語る貴重なものです。
本活動では、上記のような校内資料を水洗浄・乾燥、ドライクリーニングによって修復しました。
修復した資料は校内で作成された冊子、学校要覧などのパンフレット、
学校新聞などの一枚もののプリント、合わせて約千点です。
まず資料の状態確認、修復方法の毎の選別をし、ナンバリング、
洗浄前のドライクリーニングを行い、準備を整えます。
その後、3月18・19・21日に、学生ボランティア・外部参加者と一緒に
資料の洗浄・乾燥、ドライクリーニング等の作業を行いました。
3日間でのべ50名(うち本学学生41名)の方に協力していただき、
講師として遠野市遠野文化研究センターより職員の方2名をお迎えし、
水洗浄とドライクリーニングの方法を実演しながら指導いただきました。
水洗浄が可能な資料は、カビを抑えるためにアルコールを吹き付け、
不織布・ネットで挟み、水に入れ刷毛で汚れと塩分を落とします。
水気を切った後、最後にコルゲートボードとろ紙で挟み、専用の棚に入れ2日程度乾燥させれば完了です。
洗浄前は塩分を含み、砂でザラザラしたり皺がよっていたりしたものが、
塩分が抜けたことで完全に乾燥し、手触りもツルツル、ピンとした状態になります。
こうすることで、再度保存に耐えうる状態になりました。
また、資料によっては形態・状態の観点から水洗いが難しいものもありそのようなものは刷毛、
歯ブラシ(動物毛のもの)、スポンジなどを使い1枚ずつ丁寧にドライクリーニングを施しました。
今回、普段滅多に経験できない作業ということもあり、
参加者は指導に耳を傾けつつ一つずつ丁寧に作業を進めてくれました。
また、今回は本学司書課程、学芸員課程の学生が多く参加してくれ、得るものも大きかったのではと思います。
今後は修復が完了した資料を再整理し、ファイリング等を行った上で
高田高校へお返しする予定となっています。
2013/7/1更新
高田高校の被災資料修復の最終作業から返却までについてご報告します。
上記2の校内資料修復については、修復が完了した資料の整理・ファイリング作業を5月に行いました。
資料の劣化を防ぐため、博物館などでも使用される専用の保存容器を用意し、
内容を確認しながらファイリングをしていきます。
各ファイルには閲覧しやすいようタイトルラベルを付けました。
新聞のスクラップブックは以前と同じものを用意し、
お預かりした際と同じ順番で1点ずつ貼り付けていきます。
ファイリング作業には本学学生ボランティアのべ37名が参加してくれました。
また、修復した校内資料は計1,140点となりました。
(内訳) ・冊子(研究紀要など) 14点
・パンフレット類(学校要覧など) 19点
・プリント、新聞スクラップ等 1,107点
上記1の同校所蔵、谷川徹三氏揮毫の色紙修復については
状態を考慮し、資料保存・修復の専門業者に修復を委託しました。
こちらの色紙は同校創立40周年の際に、宮沢賢治著「農民芸術概論綱要」の一節
「まづもろともに かゞやく宇宙の微塵となりて 無方の空にちらばらう」を
元法政大学総長の谷川徹三氏(1895~1989年)が揮毫したもので、同校のシンボル的な存在でもあります。
修復には2月に本学教員・図書館職員が立ち会い、カビ菌検査、ドライクリーニング、
洗浄、脱酸処理、フラットニング等の作業がプロの手によって行われました。
そして6月6日(木)、高田高校を訪問し、お預かりしていたすべての資料をお返ししました。
横田校長をはじめ、多くの先生方に修復が完了した資料を見ていただき、大変喜んでいただくことができました。
今回の支援は私たちにとって初めてとなる作業が多く、貴重な経験となりました。
※資料返却時の様子が岩手日報に掲載されました。
※岩手日報 平成25年6月7日付
※この記事・写真等は岩手日報社の許諾を得て転載しています。